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Orgelsonate Nr.10 in h-moll, op.146
オルガンソナタ第10番 ロ短調 作品146
Praeludium und Fuge; Thema mit Veränderungen; Fantasie und Finale
以下第三楽章「ファンタジーとフィナーレ」の該当箇所
はっきりいってこの第10ソナタは、ほかの人気のあるソナタのように話のネタになるようなエピソードがない。ハーヴェイ・グレイスは「最初の1ダースのソナタにおいて最高の一つだが。あまり知られていない」と述べ、マーチン・ウェイヤーは「観客を魅了する8番ソナタの技巧性も、9番の和音の豊かさも持ち合わせていない」といっている。
作品のスケッチは第一楽章は1886年6月4日に、第二楽章は1886年6月7日が終わっている。第三楽章の日付は不明だ。清書は同年6月19日に全て終えられている。この曲もほかのソナタ同様、ピアノ4手連弾リダクション版が作成され、7月3日に完成された。両バージョンはライプツィヒのフォアベルクに送られ、7月19日に450マルクの報酬とともに、仕事が積みあがっているため出版は翌年になる旨の返答があった。フォアベルク社は印刷譜の見本本は11月中までにラインベルガーに届いた形跡がある。実際の販売はやはり翌1887年2月だった。
第一楽章にフーガを含めたため、従来の第9ソナタのように「ファンタジーとフーガ」では最終楽章をまとめるわけにはいかず、ラインベルガーは「ファンタジーとフィナーレ」を用意した。そのさい、フィナーレの2分の2拍子 Allegro non troppo (72小節目アウフタクト以降)は直筆譜では2部音符=63となるところを♩=63とミスプリントされたゆえ、速いテンポ(*)で演奏されがちだった。第二楽章の「主題と変奏」は24小節で主題を提示後24小節ずつ8つの変奏がおこなわれる(最後の変奏は第7変奏のコーダとして10小節)。ラインベルガーのオルガンソナタ5倍の法則で、3拍子系のリズムではなく、2/4拍子となる。
(* Amadeus版楽譜などは未確認なので、Carus批判校訂版以外を使用する場合は注意が必要である)
【追記】2021/Apl/23
Amadeus版とButz版を確認してみました。Butz版ですが、これはどうやらCarus批判校訂版も参照しているのか、とくに注釈はありませんが「Allegro non troppo 2部音符=63」に修正しています。問題はAmadeus版なのです。
こちらの版は「Allegro non troppo ♩=63」と初版のミスプリントのままです。問題は他にもあり、個別解説がデタラメなのです。それぞれの楽章が「3つの楽章は1886年の5月23日、5月27日そして6月4日に作曲され、弟子でリストの友人かつオルガン助言者のワイマールの宮廷オルガニスト、アレクサンダー・ヴィルヘルム・ゴッシャルクに献呈された。」とあるのですが、これが全部間違いです。まず日付はAmadeus版でのオルガンソナタ12番完成の日付です(1888年)。しかもその12番の日付も間違っています。正しくは下書きが順に5/23(これは推定)、5/25、5/30。清書が5/23、5/30、5/30なのですから。また10番はA.W.ゴッシャルクへの献呈は成されていません。彼への県手は12番で行われています。10番には被献呈者はいないのです。どうやら正しくない12番の情報が混じっちゃったみたいです。また「ソナタは同年ライプツィヒのR. フォアベルクから出版され、今回は直筆原稿に含まれていた作曲家によるピアノ連弾用の編曲がなかった」とも書かれていますが、上記の通りピアノ4手連弾リダクション版は7月に完成しフォアベルクに送られていますので、なぜこのような解説になるのか理解に苦しみます。以上Amadeus版でこの曲を演奏する場合は、かなり慎重になる必要があります。