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Orgelsonate Nr.7 in f-moll, op.127
オルガンソナタ第7番 ヘ短調 作品127
Praeludium; (Andante); Finale
1881年に完成したオルガンソナタ7番はハンス=ヨーゼフ・イルメンによれば第一楽章の完成に日付は不明だが、第2楽章は10月6日、第3楽章は10月10日に出来上がったという。ただしこの日付はあまり根拠は無く、確定しているのは清書(BSB Mus.ms. 4597)の末尾に書き込まれた「10月16日」の日付だけである。スケッチブック(BSB Mus.ms. 4739b-3, 60ページ付近)にも日付は見当たらない。ソナタはミュンヘン大聖堂の音楽監督カール・グライトに献呈された。ハーヴェイ・グレイスは「"前奏曲"はラインベルガーの独創力の良い例です。それは5つ以上の主題に基づいており、それぞれほとんど等しく重要です。それらのうち二つは長い楽章に発展する十分な余裕のある素材を与えます。しかし、オルガンはは単調になりやすく、発展された展開は退屈につながりやすい。ラインベルガーはこの危険を認識しているようです」とコメントしている。
1882年にキストナーから出版された初版では第2楽章の速度設定に誤植があり、3/8拍子にもかかわらず♩= 80と記されている。グレイスは「明らかにありえない」とし、自身の校訂したNovello版では第二楽章自体を3/4拍子♩= 80に直している。ただしこれはやはりキストナー版のミスプリントで、ラインベルがー自身の清書では♪= 80と指定されている。
1888年2月に編曲されたソナタ4番の第2楽章のオーボエとオルガンアンサンブルのための『Andante Pastrale アンダンテ・パストラーレ』と同じ編成で、翌1889年2月に『Rhepsodie ラプソディー(狂詩曲)』に単一楽章で編曲された。『Andante Pastrale』もそうだが、この編曲を行った動機は不明である。両曲とも2月に完成させているのは偶然なのだろうか。出版を担当したキストナーからの好意的で、すぐに出版準備に取り掛かるという手紙以外にこの曲に関する言及は存在しない。『Rhepsodie』は同年中に出版された。
『Rhepsodie』はニ長調に移調されたヴァイオリンバージョンも存在し、出版されている(オーボエバージョンと原曲は変ニ長調)。作品150のようにヴァイオリンとオルガンとのアンサンブルとしてのレパートリーになりえるはずだが、まず演奏されることはない。直筆稿は24小節目までしか現存せず、以降は喪失しただけなのか、完成できず出版社側で復元したのかわからない。
ラインベルガーの下書き帳へ妻フランチスカ(ファニー)が書き込んだ漫画。オルガンを弾く本人のカリカチュアか。オルガンソナタ7番第3楽章(Finale)21小節目 Fuga, Moderatoに該当する箇所。「Sonata VII」の文字も見える。音符の並びから漫画が書かれたあとに下書きを書き込んだことがうかがえ、妻の漫画を楽しんでいたのだろう。(BSB Mus.ms. 4739b-3, P60)
余談
三省堂「クラシック音楽作品名辞典 3版」にてラインベルガーの作品が紹介されていますが、ソナタ7番の解説で
『◆第2楽章はフルート(またはオーボエ)、オルガン用の「ラプソディ」Rhapsodieに編曲。』
と書かれています。が、これは間違ってますね。上記のようにラプソディーはオーボエ(またはヴァイオリン)とオルガンのための作品です。
これはおそらく『フルート(またはヴァイオリン)とピアノのために「ラプソディー Rhapsodie」H dur WoO27』と取り違えていますね。Rhapsodie違いです。この辞典はオルガンソナタ4番でも力一杯間違ってますので気をつけてください。